桜台ビレジは1969年竣工し、設計は世田谷美術館等を手がけた内井昭蔵氏によるものです。
神奈川県建築コンクール優秀賞受賞作で、青葉台の街並みを作る一つの代表的なマンションです。
実は我々ショセット建築設計室の事務所もここにあります。
築40年を超えていますが、今でも幅広い世代が暮らし、春になると桜を見に近隣住民の方が花見に訪れる地域に愛されている建物だと感じています。
購入されたのはフルリノベーションが必要な物件でした
T様ご夫婦に初めてお会いしたのも、この建物でのことです。
私たちに同じくこの建物に惚れられて、購入を決められていました。
ただ、売りに出ている部屋は完全にリフォーム済みの物件か、
全く手を付けていない竣工当時に近い状態の物件。
完全にリフォーム済みの物件は中央の収納が取り壊され、広く明るい空間となっていましたが、
Tさんご主人は竣工当時の手をつけられていない物件に惹かれました。
同じ広さながら、壁や収納で仕切られている方が広く感じるという感覚を話されていました。
それは玄関を入ってキッチンがちらっと見たときのワクワク感や、風の通り方、
光の入り方だったのではないかと思います。
私たちも同じ建物に住んでいながら、その魅力に改めて気づきました。
そこで、今回のリノベーションは、
竣工当時の空気感をまとった新しい空間にする、
というのがテーマになりました。
Tさんご夫婦はまだリノベーションプランが固まっていない時期から、
お休みの日はお部屋に訪れ、壁を解体したり、畳を剥したり、
と自分たちでできることは、と様々な作業をされていました。
私たちも夜遅くまでお部屋の電気が灯っているのを見て、
感心しきりでした。
なんとか、良い空間にできないかと模型を見ながら色々なプランを考えました。
最終的に、竣工当時押入れだった部分の一部を写真家のTさんご主人のための暗室に、残りは引き続き収納にした、回遊できる間取りになりました。
壁側にはハンガーパイプを設置。
54㎡という、限られた面積では、多くの物を持つことはできませんが、必要最低限の物を収納するスペースを確保しました。
床は当時の木組みの床を残したいと私たちもご主人も思っていましたが、状態があまり良くなく、残念ながら撤去することに。
最終的には合板を張ることになりました。
この状態でも十分味がある空間ですが、今後、気に入ったフローリングを上から張ることもでき、長い暮らしの中で楽しんでもらえたらと思っています。
<参考になるページ>
家づくり相談あれこれ:マンションを買ってもっと自分好みの空間にしたいけれど・・・ どんなマンションを選べばいいんだろう?